−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 覆面調査員の活用が飲食店や小売業で広まっている。各店を見回る本社の指導員や顧客アンケートでは見えてこない、消費者の視点で接客や店舗の改善点を発見できるのが強み。商品開発やパート・アルバイトの士気向上につなげることもできる。覆面調査員を店舗の改善に活用するポイントを、調査大手の日本エル・シー・エーに聞いた。 昨年六月に開業した、東京・銀座のカラオケ・レストランの複合店「パセラリゾーツ銀座店」。レストランには壁面に水が流れるコーナーから小さな個室までさまざまな席がある。来店者には、混雑していなければ「店内をご案内してから席をお決め頂けます」と声を掛ける。「席を選びたい」という覆面調査員の声を反映した接客だ。 覆面調査員は一般消費者を装い、店の雰囲気から接客、商品などを評価する。同店を運営する外食・カラオケチェーンのニュートン(東京・千代田)は、二〇〇四年から全十三店舗に覆面調査を導入。営業を統括する北村治部長は「店舗運営側の視点では気付かなかった視点が多いです」と話す。 覆面調査員の活用は米国で発展し、日本では三年ほど前から広まった。調査会社は日本に三十社以上あるという。ニュートンの調査を手掛ける業界大手、日本エル・シー・エー(LCA)のチーフコンサルタント、渋谷行秀氏は「接客ともてなしを向上するため、覆面調査を活用する企業が増えた」と話す。 LCAの得意先は飲食店のほか総合スーパー、アパレル、ホテルなど五百社。調査員は全国に八万人いる。多くは副業として登録するOLなどで、指定された店を訪れた後に結果を文書で報告する。 「グラス・ジョッキを空にしたまま、しばらく待っていて下さい。スタッフからおかわりのお勧めがありましたか」など、項目は約五十にわたり、自由記述のコメントは二千文字に達する。LCAの場合、調査員の利用には、一店舗一回一人一万円と、飲食にかかる実費が必要だ。 覆面調査のメリットは、他の手段より、顧客の生の声が分かること。本部の指導員が来たときだけきちんとしているのはありがちなことだ。店頭に置くアンケートは回答率が低い上に、内容もクレームに偏りがちだ。覆面調査は新規顧客と何度も来店しているリーピーターの両方の声を集めることができる。調査会社にもよるが、評価基準が的確なため、他店との比較もしやすい。 会社への帰属意識が薄いアルバイトやパートの士気向上にも有効だ。顧客が喜んだり、不満を持ったりした点をリアルなコメントで示されると、、励みや反省につながる。商品政策の参考にしたり、同じ調査を自社店舗と競合店にして課題を発見するケースもある。 覆面調査を依頼するときの注意点は、あら探しの道具にしないこと。「接客を改善するには、いい点を見つけて伸ばす方がいい」(渋谷氏)。もう一つは調査員の声を何もかもうのみにしないこと。洋風がコンセプトの店に、掘りごたつを無理に設ける必要はない。 「覆面調査員の視点でライバル店を見ると、自分たちのいい鏡になる」。渋谷氏が挙げる飲食店で業績と連動しやすいチェックポイントの一つが「親しみのコミュニケーション」をしているか。来店した子どもに「かわいいTシャツね」と声を掛けるなど、商品やサービスと直接関係のない対話が再度の来店につながる。 混雑時に並んで待っている客に、お茶を出したり、あと何分くらいで席が用意できるか伝えるなど、気遣いをしているかもリピーターにつながるポイント。これらは接客マニュアルでは見落としがちという。
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−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 質問するより観察したほうが正確な情報が得られる場合もある。店内をどう歩いたかなどは、質問されても正確に答えられない。人物、場所などの情報を、調査員や機械を使って観測・評価するのが観測調査だ。 客の店内での動き方を調べる「歩行動線調査」、販売価格を調べる「店頭価格調査」、新聞折込チラシの「配布枚数調査」、客になりすまして接客態度を調べる「覆面調査(ミステリーショッピング)」、歩行者・自転車や車の「交通量調査」、周辺環境などを調べる商業施設の「立地条件評価調査」など様々な観測調査がある。 チェーンストアなどでは、覆面調査で接客態度の改善策を検討したり、歩行動線調査で売り上げを伸ばす陳列方法などを検討したりする。小売店の売上高は動線の長さ×立ち寄り率×視認率×買い上げ率×買い上げ数×商品単価で計算でき、動線を長く、立ち寄り率や視認率を高くする方法を工夫している。 コンビニエンスストアでは、レジで購入客の性別や年代などを視察し、購入商品といっしょに記録して新商品開発に活用したり、立地環境(観光地・ビジネス地・住宅地、学校立地など)に応じて品ぞろえを変えたりしている。また、立地条件として、看板の視認性や通貨車両の速度などを出店の判定基準にしている。 観察調査では、観察の対象や条件などを的確にすることが重要だ。例えば通行人数は、曜日や天候、近隣のイベントの有無で違ったりする。覆面調査では観察員や観察時間帯によって評価が違ったりする。機械による観察では、センサーの設置場所が大切だ。 センサー技術はめざましく進歩しており、ビデオカメラの映像から、特定個人やナンバープレートも識別できる。ICタグを読み取れば、どこで買い、どのように処分したかまで分かるようになる。カメラ付き携帯電話の普及で献立、弁当の中身、家具の配置などの映像も簡単に収集できる。 百聞は一見にしかずで映像なら言葉で表現しにくいことも記録できる。文字や言葉を介さず、あるがままの情報が把握できる。機械により様々なデータを正確かつ瞬時に収集・伝達できるようになっているが、価値ある情報にするには人間の感覚と頭脳による適切な企画と分析が必要だ。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ 本シリーズは、「経営改善を図るマーケティングリサーチ」を対象にしたテーマですが、この メルマガは、様々な業界の実務事例をもとにした経営情報をご提供していきますので、次回のテーマ にもご期待下さい。 また、「こんなテーマをとりあげてほしい。」や「こんなテーマの経営情報がほしい」というリクエスト などがございましたら下記メール宛にご要望をお寄せ下さい。 このメルマガは、皆さんのニーズにしっかりと応えたものにしていきたいと考えております。 リクスエト・ご要望などはこちらへ winmembers@nmr-inc.jp ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ |