−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 今回の2回シリーズでは、マーケティングリサーチの企画の立て方から順次解説をしていくこととする。 他の様々な企画と同様、ビジネスリサーチも「なぜ」「誰を対象に」といった5W1Hを念頭に置いて企画を立てる。ここで企画の大前提、基礎となるのは、「なぜ」すなわちリサーチの課題や目的の明確化だ。課題・目的がはっきりしないと、「誰に」「どんな情報を」など5W1Hの他の要素も決まらない。 課題の考え方は二通りある。当面の課題に焦点を絞った対症療法的「ファストリサーチ」と、企業の理想形とのギャップを課題に根本原因の究明と解決策を探る「スローリサーチ」だ。根本原因を解決するリサーチが可能ならこれにこしたことはないが、簡単にできないこともある。二つの方法の使い分けが必要だ。 仮説作りも重要だ。課題と目的は、原因と結果の因果関係や解決策などの仮説を立てて明確化する。また仮説をもとに、どんな情報を調べる必要があるか検討する。仮説を誤ると「ピント外れ」の情報を集めることになるので、細心の注意を払いたい。 ただ、5W1Hの各要素は「なぜ」から順番通りに決めてゆくわけではない。お互いに関連しており、仮説や他の要素と考え合わせながら、詰めてゆく。手順を具体例で説明しよう。 某店で、売り上げ不振の原因を調査するとしよう。まず各部門の意見や帳簿を調べ、買い物客の様子も観察する。その結果、セールの反響が低下気味だと判明し、「セール不振の改善」を課題としてとりあげるとする。原因として「セール内容のマンネリ化」「品ぞろえ不足」「チラシの配布地域が狭い」「競争店の影響」など、仮説を考え、原因と結果の関連図を作る。 色々な原因が絡み合い、一回の調査で根本的に解決するのは困難な場合もある。時間や予算がなければ、短時間で改善可能かつ効果が期待できるものを当面の目的にする。例えば「チラシの改善に役立つ情報を得ること」などだ。 調査対象も考慮する必要がある。一般的なのは来店客調査だが、当日来店しない客の意見は聞けない。カード会員も登録客以外の意見は聞けない。商圏内の全世帯を調査するのが理想だが、低予算、短期間で結論を出したければ、平日と土日の来店客調査になる。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ |
【バックナンバー】 ・8月号 まちづくり・コンパクトシティ@ ・9月号 まちづくり・コンパクトシティA ・10月号 まちづくり・コンパクトシティB ・11月号 まちづくり・コンパクトシティC ・12月号 新規創業・第二創業 ・07.1月号 シニアマーケット ・07.2月号 消費動向 ・07.3月号 新卒者教育・育成 ・07.4月号 新卒者教育・言葉遣い ・07.5月号 コンパクトシティ ・07.6月号 接客スキル ・07.7月号 マーケティングリサーチ ・07.8月号 2007年問題 企業の積極的な対応 ・07.9月号 企業の人財育成 ・07.10月号 社員の能力評価 ・07.11月号 マーケティングリサーチの手法 |
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 今回は、アンケート調査の実施手順−来店客調査の企画、実査、集計に続き、今回は分析について説明する。 集計結果を見ながら、アンケート票の質問ごとにコメントを記述し、グラフで視覚化する。構成比が「多い」「少ない」の記述に終始せず、データから何が言えるかとの視点で分析したい。ただし、客観的事実と推察は区分して記述する。 分析で重要なポイントの一つが対象者属性だ。来店者の居住地で商圏がわかる。通常、近場ほど来店率が高い。町丁目ごとの標本数を多い順に累計し、全体の六割に達するまでの町丁目を第一次商圏、八割までを第二次商圏とし、地図上に色分けして視覚化する。 チラシの配布エリアと商圏を照合すると、チラシの効果の有無、今後重点的に配布すべき町丁目がわかる。近場なのに来店客数が少ない地域があれば、競合店の影響でチラシの効果が低い可能性がある。今後、競争店のチラシなどを調べて対策を考える必要がある。 来店客の年齢構成は、商圏内全体と比較する。市区町村別の年齢構成は国勢調査の結果でわかる。例えば、商圏全体では三十代が多いが来店客では少ない場合は、三十代の回収率は低いか、あるいは他店を利用している可能性がある。 クロス集計の分析では差異の有無を「統計的検定」で確認したい。例えば、チラシの効果を調べるため、「チラシを見ている人」と「見ない人」の来店頻度を比較した場合、パーセントの差がどの程度なら差異があるといえるか。統計的検定とは標本数や回答頻度をもとに判定するもので、表計算ソフトを用いて行う。 自由回答で質問した要望などは、大まかにまとめた結果に加え、個々の具体的意見を一覧表にしておくと事後の対策に役立つ。例えば、商品、サービス、セール、広告それぞれについて、意見の数と、具体的意見だ一覧できる表にする。 最後に、調査結果から何が言えるか、調査の前提となった仮説は検証できたか、などを総括する。加えて、現状の問題点や今後の課題も記述する。来店客調査では商圏全体の消費者のことは把握できないなど、実施した調査手法の限界も記述しておきたい。アンケート結果をいかに活用するかの提案も必要だ。 企画、実査、集計、分析の各工程を正しく積み重ね、正確な情報を得てこそ、結果を生かした改善策と売り上げ増の好循環が築ける。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ |